ギークのためのネットワーキングサービス、Forkwell をリリースしました

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初めまして。
株式会社garbs でプロダクトマネージャーをしている大岡由佳(おおかゆか)と申します。

先週の4月3日火曜日、弊社にて Forkwell というネットサービスをリリースしました。
この Forkwell、どんなサービスかという説明は難しいのですが、誤解を恐れずにひとことで表現すれば「ギーク向けLinkedIn」。

ユーザーのエンジニアが、自分がどんなスキルを持っているのかをタグ付けによって表明し、それを他のエンジニアが「+1」していくことにより、その人のスキルへのレピュテーション(評判)が可視化されていくというのが、現状における一番メインの機能です。

Forkwellプロフィール画像

なぜこんなサービスを作ろうと思ったか。

実は Forkwell は、最初の構想段階と全く似ても似つかないサービスになっています。
弊社garbs は、もともとソーシャルリクルーティングの会社として設立されました。

これまでも「Social Job Posting」という Facebookページ上で求人票が掲載できるアプリをリリースしていて、世間一般のノーマル(?)なソーシャルリクルーティング企業として活動を行ってきました。

そこにどういう経緯か Asakusa.rb 主宰の松田明さんが技術フェローとして所属していて、ことあるごとに自分のシンパを会社に引き入れつつありました。
そこで召喚された内の1人が大岡であったのですが、私も当初は Social Job Posting の保守・改善を行っていました。

私はインターネットサービス業界での経験が長く、C(コンシューマ)向けのサービスをいくつもリリースしてきました。
そこで求められるがままに Social Job Posting の機能追加として、ソーシャルグラフの可視化とか紹介報酬機能とかを提案していったんですね。

Forkwell は最初は、Social Job Posting の追加機能として考えられたものだったんです。
ところが色々構想が膨らんだ結果、Social Job Posting の中には入り切らないと判断され、別サービスとして切り出されることになりました。

それが2011年の8月。独立したサービスとして開発されることになった当時のコード名は「Onepitz(ワンピッツ)」。
「紹介のために一筆書く」というところから付けられた名前でした。

この時点でも、まだこのサービスは「ITエンジニアのための紹介報酬付き転職支援サイト」であり、そのモデルとしていたのはアメリカの「topprospect」でした。
topprospect は、ITエンジニアが LinkedIn や Facebook で自分の友達を求人に紹介し、その人が応募して採用されたら紹介報酬(案件によっては15,000ドル以上の高額報酬)がもらえるというサービスです。

それをモデルとしていたものがなぜか、名称も開発コードから正式に「Forkwell」と決まり、10月半ばのコーディングが始まったあたりから、作りながら内容がどんどん変化してきました。

それに至る一つの大きな原因は、2010年の夏にさかのぼります。

RubyKaigi2010ポスター

Forkwell正式リリース前の告知ページのチーム紹介欄でも書いたのですが、大岡のライフテーマは「エンジニアの幸せと業界・社会の発展を両立して実現させる」ことです。

青臭いですね。笑ってもらってかまいません。

そしてさる経緯から RubyKaigi2010 で実行委員の相澤歩さん(現Salesforce)からお話をいただいて、「Rubyエンジニアと企業の幸せな関係」と題して、スポンサーの人事採用担当の方を招いてパネルディスカッションを行うというセッションを持つことになりました。

前半は当たりさわりなく無事に進行、しかし後半も半ばを過ぎたころ、私が空気を読まずに主張したのは以下のことでした。

RubyKaigiスライド画像

日本ではITエンジニアは「ブラック企業で泥のように働かされる3KのIT土方」というイメージを持っている人も多く、学生がITエンジニアになることを忌避する風潮すらある。

アメリカでは毎年、職業ランキングの1位か2位、インドでもお金持ちになりたければ医者かプログラマになるべきだと言われていて、社会的地位も収入も非常に恵まれているのにこの彼我の差は何なのか。

日本では、エンジニアが入った会社にスキルも交友関係もロックインされてしまう。
社外に通用するスキルを磨くことも、社外の人脈を築くこともあまりないため、業務を客観的に見ることができず、ただ与えられた仕事を受動的にこなしていくのが日常になってしまう。

それが日本のエンジニアの不遇の元凶なんだという持論を展開しました。

そしてエンジニアは2ちゃんねるで自虐してるだけじゃなく、もっと勉強会に出かけるなどして技術を磨くことはもちろんアジャイル等のエンジニアに主導権を取り戻すムーブメントに理解を深め、さらに人脈を広げて社外にも通用する自分ブランドを確立すべき。

そして企業はそういうエンジニアを、地位はもちろん収入の面でもちゃんと評価するべき。


当時はここまで考えはまとまっていませんでしたが、おおむねそういう話をしました。

しかしこの話を聞いた会場のお客さんたちは「えー、そんなことしなくても食べていけてるし、表になんて出たくない」という表情がありありでしたし、人事担当のパネリストたちは「エンジニアの転職リスクが増えるし、人件費が高くなるのはもっと困る」みたいな表情で、一気に場内は盛り下がりました。

まさにこの反応の背後にある個人個人の意識が、日本でエンジニアの社会的地位も人気も収入も低迷している原因であり、これを何とかしない限り状況の改善は見込めないと思い知らされた瞬間でした。

Forkwellロゴ

この苦い経験が、Forkwell を今のような姿にした大きな理由のひとつでした。

転職もひとつの選択肢ですが、その前に社外に通用するスキルを身につけ、それが他人に評価されて目に見える形で示すことができなければ、いくら今は売り手市場とはいえそうそう転職先も見つかりません。

そこから、自分がどんなスキルを持っているかを表明し、それに他人からの評価が可視化されるという Forkwell の機能が完成しました。
これには自分ブランドの確立ということ以外に、各スキルにおける自分の人脈の可視化が含まれています。

たとえば自分は Rubyist だけど JRuby はさわったことがなくて、でも今度の仕事に使うことになった。
そんなときに JRuby のスキルページで自分の友達を見つけることができれば、何か困ったときに助けを求めることができます。

カタカナで表現するとうさんくさいですが、ITエンジニアのセルフブランディングとネットワーキング、これを助けるツールとして Forkwell を育てていきたい。
おかげさまでリリースは好評、コアなギークを中心に「あ、私この人のプロダクト使ってるわ」というすごい人たちがたくさんサービスに参加してくれました。

ただ、Forkwell はセルフブランディングやネットワーキングが苦手な人でも使ってもらって、楽しんで使ってる内に気がついたらそれらに役立っていた、というサービスにしたいというコンセプトがあったのですが、まだまだ敷居が高いと尻込みしているユーザーが多いこともわかりました。

それに関しては、ひとえに私の力不足です。
今後、そういう人たちにももっと気軽に使ってもらえるよう、機能追加・改善を行っていきたいと思います。

Forkwell の画面右上には「ご意見・ご感想 (Feedback)」というリンクがあり、そこから Forkwell にこうしてほしい、こんな機能があったら使いたいといったコメントを送ることができます。

また、公式ツイッターアカウントもありますので、メンションで送っていただいてもけっこうです。
いただいたご意見を参考に、Forkwell をもっと良くしていきたいと思います。


「コードで世界を変える」というのはよく使われる表現で、今さら私たちがそれを口にするのもおもはゆいのですが、私たちは本気で「1人でも多くのエンジニアに活躍してもらい、彼ら彼女らが大切にされる世の中にしたい。そしてそれが世の中の閉塞感を打開することにつながるはず」と考えています。

それに Forkwell が貢献できれば、これ以上に嬉しいことはありません。
どうぞこの先、Forkwell をよろしくお願いします。

ライタープロフィール
おおかゆか(oukayuka)
Forkwell の発案者でプロダクトマネージャー。
エンジニアと企業が幸せな関係を結べるようなしくみ作りとそれを世の中に広めるのがお仕事。
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