「なぜ Facebook でしかログインできないんですか?」とは、Forkwell のユーザーからよくお寄せいただく疑問でして。
すでにユーザー登録済みの方はご存知でしょうが、Forkwell へのサインアップは現状、Facebook アカウントによる登録だけに限られています。
ただ日本でも CoffeeMeeting や Wantedly、WishScope のような Facebook 連携のWebサービスが次々と増えている昨今、「Facebook でしかログインできないのが残念」という意見に今ひとつピンと来ませんでした。
しかし Forkwell もリリースしてから約1ヶ月半がたち、このブログとも合わせてユーザー動向を探っていく内に私たちも気づきました。
Forkwell がターゲットにしているITエンジニア層には、Facebook よりも Twitter のほうが断然、波及力があることに。
では Forkwell のライバルたちはどうなのか。
ここで Forkwell と同じ、ITエンジニア向けの国内外のソーシャルなWebサービスと比較してみましょう。
GitHub | |||||
---|---|---|---|---|---|
Forkwell | ○ | × | × | × | × |
coderwall | × | ○ | ○ | × | ○ |
Masterbranch | × | × | × | ○ | ○ |
geekli.st | × | ○ | × | × | × |
coder.ly | × | × | ○ | × | × |
Qiita | × | ○ | × | × | ○ |
hat.io | ○ | ○ | × | × | ○ |
採用数 | 2 | 4 | 2 | 1 | 4 |
おおむね複数の認証方式を採用している中で、Forkwell だけが見事に浮いています(笑)
各社ともがちゃんとリサーチした上でのこの結果でしょうから、どうやら日本に限らず、海外でもITエンジニアは Facebook より Twitter、GitHub のほうがお好みのようです。
この結果からするに、単純に登録ユーザー数を最大化したいのであれば、Twitter と GitHub を外すテはありません。
効率良くこの2つだけを採用している Qiita は、見事な戦略と言えるでしょう。
逆にエンジニア層をターゲットにするなら、一番やばいのが「Google だけ」で、次が「Facebook だけ」「LinkedIn だけ」ということになります。
Forkwell はわざわざこの二番目にやばい「ログインは Facebook だけ」を採用しているわけです。これは疑問に思うなというほうが無理というものです(笑)
ではなぜ、Forkwell はユーザー登録数を減らしかねない結果になるにも関わらず、頑なに Facebook でしかログインできないようにしているのでしょう。
私たちが Forkwell のサービスを通して支援したいことに、「エンジニアの人脈作り」と「エンジニア自身のブランディング」の2つがあります。
最近は勉強会等のつながりで、そういう活動を活発にしている層は社外に広い人脈を持つようになってきていますが、まだまだ全体から見れば氷山の一角でしかありません。
直近に転職を考えているわけではなくても、社外に人脈を持つことは、その人のキャリアにとって強力な武器になります。
Facebookフレンドは、他のSNSと比較してもリアルの友人・知人である可能性が断然高く、そのリアルなソーシャルグラフが Forkwell ではサービスにそのまま持ち込まれます。
たとえば、Forkwell の Ruby スキルページの友達一覧に表示されている人たちは、あなたが Ruby で仕事をしていて何か困ったことがあったときに、助けを求めることができる人たちです。
今の Forkwell で実現できているのは「その人が持つ既存の人脈の可視化」のみですが、近い将来にはスキルを軸に人脈を広げられるようにしたいと考えています。
そのときに、Twitter で相互フォローしている人が果たして「自分の人脈」にカウントされるのかというと、それは難しいでしょう。
数あるSNSの中でも、Facebook だけがその要件を満たしていると私たちは考えています。
またブランディングという点においても、実名制でプロフィール画像に顔写真が登録されていることの多い Facebook が、他のSNSと比べても断然有利です。
アニメアイコンとハンドル名が悪いとは言いません。ギーク層に限定された世界ではそれもいいでしょう。(実際、おおかもアニメ好きですし)
しかし Forkwell が目指すのは、エンジニア個人のブランディングと、さらにはそれを通じてのエンジニアの社会的地位の向上です。
「IT土方」の悪名の下に学生たちが忌避するような職業ではなく、ITエンジニアという職業を子どもたちが憧れ、かつ現役の人たちの満足度も高いものにしたい。そう考えています。
そのためにはリアル・ネットを問わずエンジニアが今以上にもっと表に出て、一般の人たちにアピールする必要があります。
そのときにアニメアイコンとハンドル名では、やはりどうにも都合が悪い。ユーザー登録を Facebook アカウントだけに限ることで、その問題は解決できます。
「エンジニアの人脈作り」と「エンジニア自身のブランディング」、この2つは Forkwell にとって絶対に外せない要素でした。
以上のの理由から、Forkwell では当初の登録ユーザー数に多少のブレーキがかかることになったとしても、ログインは Facebook アカウントによるものだけに限定しているわけです。
ただ正直、そんなことはかまわず Twitter と GitHub が使える Qiita のようなサービスがうらやましいという気持ちは確かにあります。
しかしそれは優先度の問題であり、Forkwell では目先のユーザー数よりも理念を優先させました。それが吉と出るか凶と出るかは、当事者として非常に怖いところではありますが、今は自分たちの理念の正しさを信じて進むしかありません。
いま新しくWebサービスを作るに当たって、ログイン認証をどうするかは非常に悩ましいところだと思います。
一昔前なら、メールアドレスとパスワードを登録させてオッケーだったわけですが、Path や Instagram のようなスマホアプリだけのサービスは例外として、独自アカウントだけでやっていくという選択肢は現実的ではありません。
現在、アクティブユーザー数では世界第3位になったとも言われる Pinterest でさえ、Facebook と Twitter アカウントでもログインできるようになっています。
ユーザー層の傾向に合わせてSNS認証を組み合わせて使う最大化戦略と、Forkwell のように理念を優先させて認証種類を限定してしまう戦略。
どちらを選ぶのが有利なのかは、サービスの種類にもよりますし、一概にこうとは言えないでしょう。
また Forkwell でも、「Forkwell から友達申請できるようにしてほしい」というユーザーの声もあり、将来的にソーシャルグラフを Forkwell 独自で持つという可能性も全くないわけではありません。
煮え切らない結論ですが、最終的な答えは Forkwell を含む今のスタートアップサービスの行方にかかっているわけで、私たちも「あのときあっちにしておけばよかった」ということにならないよう、ユーザーの声を真摯に受け止めながらやっていくつもりです。