エンジニアが応募したくなる求人票の作り方

なぜ世のITエンジニア向けの求人は、こんなにもイケてないのか

私は今でもエンジニアなのか非常に微妙な立ち位置なのですが、つい最近までまちがいなくエンジニアだった人間の感覚として、世のITエンジニア向けの求人のほとんどが非常にイケてないなあと感じており、その状況を憂慮するものであります。

なぜこんなにイケてないエンジニア向けの求人が世の中に氾濫しているのかというと、それは今の日本で一般的な求人票の作り方のスタイルに問題があるというか、時代に合わなくなってきているせいではないでしょうか。

一般的な求人票の作成プロセスは、人事担当の人が業者に依頼すると、そこのスタッフがカメラマンを連れてきていい感じの写真を撮ってくれ、さらにインタビューに答えるとライターが美辞麗句を散りばめられた雑誌の記事感覚の文章を書いてくれ、見栄えのいいページが一丁上がりといった流れになっています。
企業によっては「ウチの○○君をフィーチャーしたページに!」みたいにライティングに積極的に口を出して特色を出そうとしているところもありますが、まああまり大差はありません。

企業の人事としては、最低限必要なところだけ埋めていけばあとは用意されたフォーマットに従っているだけで、見た目も立派な求人票がメジャーな媒体に掲載されるのでラクですし、業者としてもそれで月々○○万円の掲載料がもらえるという旨みのある商売です。
双方に十分なメリットがあるため、このやり方がここまで一般的になったのでしょう。

エンジニアが求人票で知りたいこと、重視すること

なんでもいいの?

では例えば、私がエンジニアとして転職を考えていると仮定して、何を知りたいと考え何を重視するのか。
まず最重要事項として、現場で何の技術が使われているかということです。

私はこれまでのキャリアで PHP も Java も開発経験がありますが、ここ数年は Ruby をメインに使っていてそれに満足しています。
ですのでまず、現場で Ruby がメインに使われている求人を探そうとします。

しかしもうこの段階で、ほとんどの求人票は落第点です。
なぜなら、開発の現場でどんな言語が使われているのか書かれている求人のほうがめずらしいから。

求人票に書かれているのは「応募者に求めるスキル」がほとんどで、たとえば現場で Ruby がメインに使われているような会社の求人であっても、「JavaまたはPHP、Perl、Ruby、Pythonでの開発経験2年以上」みたいなことしか書かれていないことがほとんど。

他の言語での経験が2年以上あれば、Ruby もすぐにおぼえてくれるだろうから、応募の間口を広げるためにこう書いてあるのだろうということはわかります。
しかし多少は技術にこだわりのあるエンジニアの端くれとしては、そんな情報に何の意味も感じられません。

具体的にどの言語のどのバージョンがどの場面で使われていて、フレームワークは何を使っているのか。データベースは? インフラは?
はたまた開発体制はどうなっているのか。アジャイルへの取り組みは? 現場のエンジニアの裁量は? PCやディスプレイは、ちゃんとしたものが支給されるの?
「わかっている」人が社内にはどれくらいいるのか。他の誰にも読めないような汚いコードが日々量産されていて、その始末を押し付けられるようなことはないのか。

エンジニアとして知りたいのはこういったことです。
少なくともそういうことがわからない限りは、私は怖くて正社員としてはその求人に応募できません。

「そういうことは面談に来て聞いてくれたら、現場のリーダーから話してもらうようになってるから」という企業も多いのでしょうが、ならば最初から求人票になぜそれを書いておかないのでしょう。
応募者としては実際に足を運ぶ前の候補を抽出する検討段階として、こういった情報が必要なのです。

エンジニアが応募したくなる求人票を作るための6つのポイント

というわけで、非常に前置きが長くなってしまったのですが、ではどうすればエンジニアにとって惹きのある求人票が作れるのかという本題に入りたいと思います。
まず発想の転換が必要なところなのですが、中途のエンジニアに限って言うなら、採用の主役は人事ではなく現場のエンジニアたちだという認識を持ってほしいのです。

とりあえず誰でもいいのであれば、これまで通り大手の業者に制作してもらって、大量の応募を集め、手間をかけてその中から選ぶのもいいでしょう。
しかしその方法だと、よくて20〜30人の応募から1人の採用、知名度の高い会社なら100人に1人くらいしか採用に至らないでしょう。(この数字は実際のヒアリングに基づいた数字です)

今の時代、エンジニアの採用に成功しているのは、社員紹介が非常にうまく回っている会社です。
社員紹介経由だと2〜3人の応募で1人の採用というのが相場で、一般公募とは効率が比べものにならないくらい高い。しかもそれによって獲得できる人材の質も高い傾向にあります。

いかに現場のエンジニアたちを採用活動に主体的に巻き込めるか、成功の鍵はそこにあります。
エンジニアの人脈(ネットワーク)はSNSでつながっているので、ソーシャルメディアも十分に活用しましょう。

そして求人票作りにも、積極的に協力してもらってください。エンジニアが何を知りたいかや何に魅力に感じるかは、同じエンジニアでなければわかりません。


以上のことを踏まえ、「エンジニアが応募したくなる求人票の作り方」のポイントをこんな感じにまとめてみました。

  1. タイトルは短くまとめながらも具体的に
  2. 画像は現場メンバーの写真をメインに
  3. 応募者に求めるスキルより、現場で使っている技術を書く
  4. 本文では、「そこで働く自分」がイメージできる情報を提供する
  5. 面談担当者には現場メンバーを入れて、かつその人のプロフィールも詳細に記述する
  6. 社員に積極的に広めてもらう

基本的には先日リリースした Forkwell の求人サービスに掲載する求人情報を想定していますが、他の求人サービスを利用する際にも応用できるところが多い内容になっているはずです。
ではこれらを、順に追って説明していきます。


1. タイトルは短くまとめながらも具体的に

メンバー写真

社員にソーシャルメディアで拡散してもらうことを考えると、必然的にタイトルの文字数は限られてしまいます。
なぜなら今の日本において、もっともエンジニアにリーチできるソーシャルメディアは Twitter であるわけですが、Twitter の投稿には140文字以内という制限があるためです。

思いを込めてタイトルを非常に長くしてしまうと、それが Twitter に共有されたとき、引用したタイトルが途中で省略されてしまうという目も当てられない結果になってしまいます。

タイトルは短く、しかし具体的な内容が伝わるものでなければなりません。
たとえば短ければいいのかと、募集職種の「Rubyプログラマー」とだけ書いてしまうと、それが引用されたツイートが求人を紹介したものだということがわかりません。

また「Rubyプログラマー募集」だけでも、どこの会社の求人なのか、ツイートししてくれた人がコメント内でわざわざ説明してくれない限り、これまたわかりません。
人材を募集している求人情報であることがわかり、かつ具体的な社名やサービスを盛り込むこと。これがまず最低限必要なことです。

ちなみに弊社の求人のタイトルは、「Forkwell を一緒に作ってみたい Ruby エンジニアを募集!」です。


2. 画像は現場メンバーの写真をメインに

メンバー写真

これはエンジニアに限ったことではありませんが、どんな人たちと働くことになるのか、それが全くイメージできない求人には、誰でも応募に不安を感じてしまいます。
しかし、現場で働いているメンバーの写真が目立つところに掲載されていれば、その不安はある程度解消されます。

業界的に名の通ったエンジニアがいる会社なら、その人を載せないテはありませんし、そういう人がいなくても、現場のメンバーの集合写真を撮ってそれをカバー画像にしましょう。

心理学的にも、人間が一番目を引かれやすいのは人間の顔です。そしてそれがカメラ目線であればさらに効果的。
他の求人と一覧で並べられた際、誰もいないオフィスの写真と、そこで働いている人たちのカメラ目線の集合写真と、どちらに先に目が行ってしまうかは説明するまでもないでしょう。

弊社の求人は Forkwell のプロフィールページを集めて加工したものを使っています。
求人サービスローンチ時にあらためて撮影する余裕がなかったので、とり急ぎ突貫で私が作ったものがそのままなし崩し的に今まで使われてしまっているのですが、これは近い内にメンバーの集合写真に差し替える予定です。


3. 応募者に求めるスキルより、現場で使っている技術を書く

求人に掲載される技術タグ

Forkwell の求人では、関連する技術をタグとして登録できます。
Forkwell に限らず、このような「スキル」「技術」を求人票に書くことがあると思いますが、エンジニアでない人はそこに「応募者に求めるスキル」を書いてしまいがちです。

その結果、先述の「JavaまたはPHP、Perl、Ruby、Pythonでの開発経験2年以上」という文章が出来上がるわけですが、応募するエンジニアが知りたいのはそこではありません。
実際に今、その現場で使われている技術が重要なのです。

「そうは言っても間口を広げたいから…」という人事の方々、そんな文章でリーチするのは100人の内の99人のほうの人材でしかないことを認識してください。
「自分は Java も PHP もやってきたけど、今度は Ruby で仕事がやりたい。業務経験はないけど本も読んで自分で色々作ってみたし、最近は Ruby の勉強会にも顔出してるし」みたいな人であれば、わざわざそんな間口を広げる文章を書かなくても気後れすることはありません。

むしろ、自分の会社は現場でメインに Ruby を使ってるんだということを堂々とアピールすることで、初めてそういう人材に目を向けてもらえるようになります。
そして何を開示してどうアピールするか、そこは現場のエンジニアに必ず相談しましょう。技術的なバックグラウンドがない人が書いてしまうと、まちがいなく失敗します。

弊社の求人で登録している技術タグは、「Ruby」「Ruby on Rails」「GitHub」「Agile」「Amazon Web Services」の5つです。
またそれにとどまらず、本文でも使用している技術や開発体制について言及しています。


4. 本文では、「そこで働く自分」がイメージできる情報を提供する

一般的な求人は大きく2つのパターンに分けられて、ひとつは「世界を目指してます! キミもいっしょに世界を目指しませんか?!」みたいなひたすらアツく夢を語っているもの。もうひとつはテンプレートに従って当たり障りのない事実を羅列しているもの。

しかしどちらも、読む側にとって「そこで働く自分」がイメージできる情報に乏しく、あまり有益とは言えません。

どんなチーム編成で働くことになるのか、採用されている開発手法やツールは何か、支給されるマシンはどんなものか、どういう人が評価されてリーダーシップを執っているのか。
そういう情報があって初めて、具体的にそこで働く自分がイメージできます。

情報によっては、公開するにあたって社内的に調整が必要だったりするものもあるかもしれませんがそれらを敢えて載せることで、無難にヨソ行きの言葉が敷き詰められている求人よりも、より望ましい人材に届くはずです。


5. 面談担当者には現場メンバーを入れて、かつその人のプロフィールも詳細に記述する

私がお会いします

Forkwell の求人には「私がお会いします」と称して、面談担当者を最大3人まで設定できる欄があります。
ここで一番ダメなのは、人事担当者ひとりだけが登録されている状態。

最初の面談は、転職を考えているそのエンジニアを一方的に採用の遡上に乗せるものではありません。
応募者がその会社を自分が働くに値する会社なのか見極めようとする場でもあるわけで、そのために会いたいのは人事担当者ではないのです。

むしろそこは、何をおいてもまず現場の人間でなければなりません。聞きたいのは現場の話だからです。
そして面談の相手は、対外的に名の知れたエンジニアであれば理想的です。
なぜなら全く知らない人よりも、自分が知っている人に面談してもらいたいと人間は思うものだから。

相手がどんなスキルを持っていて、共通の知人がいるとすれば誰なのか、事前にわかっていれば不安も少ないですし、限られた時間の中での面談もより有意義なものになります。
有名エンジニアがいない会社であれば、事前に面談担当のエンジニアの詳細なプロフィールを開示することで、近い効果が得られます。

ですので、ちゃんとその面談担当のエンジニアのプロフィールを事前に設定しておきましょう。


6. 社員に積極的に広めてもらう

社員の応援画像

そうやって作った求人票も、露出を業者頼みにしてしまっては、良質な人材にリーチするのは難しいと言わざるを得ません。
それでリーチするのは基本的に、積極的に転職を考えて求人サイトを見て回っている不特定多数のユーザー層だけだからです。

良質な人材への一番確実なルートは社員経由です。そこからの流入を増やすためには、社員、特に現場のエンジニアたちに拡散に積極的に協力してもらう必要があります。
そのために今は、Twitter や Facebook という便利なメディアが使えますので、それらを活用してどんどん拡散してもらいましょう。

Forkwell の求人なら、一度に複数のメディアに拡散するための応援機能も用意されていますし、また紹介報酬というインセンティブもあるので協力のお願いもしやすいのではないでしょうか。

求人票のライティングから運用のコンサルティングまで、無料で請け負います!

はぐれメタル

以上、エンジニアが応募したくなる求人票の作るための6つのポイントをご説明しました。

極力これらを遵守しているつもりの弊社の求人ですが、おかげさまで現在47件の応援をいただいて(社内も含みますが)、すでに2件のエントリーがありました。
そのお二方との面談も終えたのですが、どちらも従来の求人サイトやエージェント経由では「はぐれメタル」並みに遭遇できる確率が少ないだろう、素晴らしいスキルの人材でした。

企画者として、Forkwell というサービスの可能性にあらためて驚いたわけですが、運用方法さえまちがわなければ、他の企業でも同様の結果が得られるはずなのです。
上記の6つのポイントを守ってもらえれば、それは必ず可能だと考えています。

とは言っても、いきなりこれらを全部実践して効果を上げるのはなかなかハードルが高いかもしれません。
ですのでこれからしばらく、Forkwell に求人を出稿される予定の企業様でご希望があれば、大岡が出向いて取材し、求人票のライティングまでを期間限定無料で請け負いたいと思います。

さらに希望されれば Forkwell の企業ページの運用や、社内的な調整といったことへのアドバイスやコンサルティングまで行います。
(ちなみに Forkwell の求人は、掲載無料の成果報酬モデルですので、試してみて効果がなかった場合でも金銭的なコストはかかりません)

これは会社としてビジネスでやっているというのもあるのですが、純粋に今の一般的なエンジニアの採用は企業と応募者双方にとって効率も悪く、マッチングもうまくいっていないと考えていまして、それは社会の不幸でもあり、その解決の手助けをしたいという気持ちからのものでもあります。

なお、この件に関するお問い合わせについては support@forkwell.com のほうにお願いします。

とりあえず Forkwell を使う使わないは置いておいても、求人票を作る際に「応募を検討しているエンジニアは何を知りたいと考え、何を重視しているのか」という視点を取り入れるだけで、反響は全然違ってくるはずです。
そしてそのためには、現場のエンジニアの協力を仰ぐことが大事で、それを厭って人事担当だけで作成してしまうと、残念な求人票がまたひとつ世の中に増えるという結果になってしまいます。

社会から不幸なミスマッチが、ひとつでも少なくなるのにこの記事がお役に立てれば幸いです。

ライタープロフィール
おおかゆか(oukayuka)
Forkwell の発案者でプロダクトマネージャー。
エンジニアと企業が幸せな関係を結べるようなしくみ作りとそれを世の中に広めるのがお仕事。
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