[寄稿] 幸せなエンジニアライフを送るエンジニアを少しでも増やすために、エンジニアだけができること

サカタカツミさんの寄稿による、人事側から見たエンジニア採用の問題についての短期連載も今回が最終回。

片や技術をこよなく愛しそれを軽んじるものには容赦なく斧を投げつけるモヒカン族、片やことあるごとに「IT業界はブラック企業の巣窟、SEやPGはIT土方」と唱えてモヒカンを冷めた目で見る厭世的“職業エンジニア”。

非エンジニアのサカタさんには両者の対立は決定的に見えるようで、この間お会いしたときもその話をされていました。解決策を求められて、「お互い価値観が違いすぎるので仲良くするのは難しいと思います」としか答えられなかったのですが、確かに採用現場においては、両者の齟齬が不幸なエンジニアを生む大きな原因になっていそうです。

このブログの今後の記事の方向性はもちろん、Forkwell Jobs ではいかにその問題を解決し、かつエンジニアが採用に関われる仕組みを作るかを考えていかないといけないなと考えさせられました。



エンジニアは他のエンジニアとわかり合えないのか、という話


短期連載の最終回。ということで、今回は『幸せなエンジニアライフを送るエンジニアを増やすためにエンジニアができること』と題して、エンジニアがなにするべきなのか、少し一緒に考えてみたいと思います。

前提として『幸せなエンジニアライフを送るエンジニア』をエンジニア自身が増やしたいのか、という問題があります(それ以前に幸せなエンジニアライフという定義が曖昧なのですが、それは置いておくとして)。非エンジニア領域に生息している筆者からすれば、エンジニア領域に生息している人たちの中に潜む、お互いが相容れない考えを持っている場合、ひどく加虐性が高くなるという性質に、いつも戸惑ってしまいます。

例えば「技術書を自費で買ったら負け」というフレーズをネット上でよく目にします。他の領域のビジネスパーソンが、自分たちの業務範囲の知見を深めるために書籍を求めて勉強するという行為を「負け」と称することや、負けであると判定することは、あまりありません。しかし、エンジニア領域に生息する人の中で「そんなことをしたら負けだ」と攻撃したい人がいるようなのです。

こういう人たちは、別の視点でも攻撃の手を緩めません。典型的なのが「休みの日まで勉強会に参加するなんてバカ」とか「家でコード書くなんてありえない」という罵倒や、「俺は自宅にパソコン持っていない」という自慢(?)もそうかもしれません。考え方が違っていれば、そっとしておけば良いのですが、エンジニアと呼ばれる人たちは、一言いいたい人が少なくないようで、特にネット上ではこういう発言に満ち満ちています。これを見ていると、エンジニアは他のエンジニアのことが嫌いなのでは、と考えてしまうほどです。


エンジニアがブログを書くのは「ナルシスト」だからなのか

エンジニアの中には、技術的なことを学んだあとに、それをまとめたり、勉強会などに参加して気づいたことを書き留めたりするために、ブログを活用している人も少なくないようです。また、日々の雑感などを書き記したり、中には退職しました、転職しましたというキャリアの節目を報告したりするエントリーをアップしている人も意外にいます。が、これも攻撃の対象になるケースを見かけます。ブログで退職報告するヤツのほとんどは「ナルシストでどうしようもない」という記述を多数見かけたときには愕然としました。

先の二回のエントリーで繰り返し書いてきましたが、企業の採用担当者の多くはエンジニアのことについて、ほとんど無知に近い状態です。ですから、人物を正確に判断することがとても難しくなる。技術的なスキルに関しても通常の採用プロセスで判定することが困難ですし、どのくらいの総合的な能力があるのかを判断するには、職務経歴書では役不足なのです。

したがって、勉強に参加したり、技術書を読んで学んだり、自分で業務外にコードを書いたりしたことを、ブログなどで日々まとめておくことは、エンジニアが幸せなエンジニアライフをおくるために、とても重要になってきます。そう、自らがどのような能力やスキルを持つエンジニアであるか、それを相手にわかりやすく伝えるには、エンジニアとしてのライフログが非常に有効な手段になるのです。事実、エンジニア採用が上手くいっている企業の採用担当者やエンジニアは、応募したエンジニアが書くブログに注目しているといいます。

エンジニア同士で罵倒し合う構造が続く以上、ログを作っておくことに躊躇してしまったり、勉強会に参加したり技術書を買い求めたり、趣味と仕事の境界線上でコードを書いたりすることをためらったりする人が、出ないとも限りません。前向きな取り組みがシュリンクしてしまうのは、とてももったいない。

「スキルアップを唱えるエンジニアはウザい」「仕事でコード書いているこちらには、そういう輩は迷惑だ」という声も聞こえてきそうです。が、その罵倒がエンジニアにとって快適に働ける環境をスポイルする可能性もあるのです。


幸せなエンジニアライフを送るエンジニアを増やすために

以前、ゆかさんは『エンジニア求人と掛けて婚活女性のプロフィールと解く、その心は相手の視点に立つことが大事』というエントリーの文末に、こういう文章を書いています。

いや別にどんなエンジニアでもいいのでしたら、わざわざこんなことをする必要はありません。

これは、企業の採用担当者に向けられた台詞ですが、同時に企業で働いているエンジニアに向けられた台詞でもあります。一緒に働くエンジニアが、どんなエンジニアでもいいなら現状のママでいい。ただ、それは嫌だ、もっとこうするべきだと考えがあるならば、積極的に採用プロセスに関与すべきだと。

Forkwell Jobs や、私がプロデュースする CodeIQ は、通常の求人サービスとその仕組みが大きく異なります(詳細が知りたい人は、ぜひリンク先をのぞいてみてください)。だからというのも変ですが、現場のエンジニアが、採用担当者に対して「こういうサービスがあるから使ってみては?」と推薦してくれるケースが結構あります。手前味噌になりますが、これらのサービスは従来型の採用サービスと比較して、エンジニアが関与する量が圧倒的に多いのです。ですから、自社の採用を変えたいと考えるエンジニアの皆さんが期待をして、活用したいと申し出てくれるのでしょう。

幸せなエンジニアライフを送るエンジニアを少しでも増やすためにエンジニアだけができることは、あまりたくさんありません。一つは、前向きなエンジニアが萎縮しない環境を整えること。そう、エンジニア同士が仲良くしてくださいというとてもシンプルな話です。もう一つは、エンジニアがエンジニア採用に積極的に関与してください、というちょっと手間がかかる話。

後者は、一時的に業務量が増えるかもしれませんし、面接官などを依頼された場合、向き不向きも大きいので、自分には手に負えないという可能性もあります。しかし、自分と一緒に働く人たちを、自分たちの手で選ぶということが、実は自分たちの働く環境を改善する、最も有効かつ、近道であることは考えてみれば、直ぐわかることですよね。前向きに働きたい、業務量を軽減したい、エンジニアとして幸せなエンジニアライフを送りたいと考えるなら、自分自身のパートナーは、なるべく自分の手で選ぶ、という状況を作り出さなければならないのです。

「応募資格:JAVA業務経験2年以上」のような求人を出す企業や、「俺たちが世界を変えるんだウェーイ系」の求人広告を作ってしまうような企業をこれ以上増やさないために、もしくは「エンジニアって要は労働集約型のアレでしょう」と、エンジニア自身がいわれないようにするためには、エンジニアの手で、エンジニア採用を変えるよりないのです。


追記

長々と書いてきましたが、このブログに寄稿したあと、私は毎回自分自身のブログでサブノートを書いています。前回のエントリーのあと、こんなサブノートを書きました。この寄稿文に違和感を持つエンジニアは、そういう環境にいるのだから幸せだと。同時に、以下のように記しています。

エンジニア採用をコアにいろいろと論じているが、これはエンジニア採用に留まらない。人材要件定義が曖昧であることはエンジニア採用だけではないのだから。いまはそれほど大きな問題にはなっていないが、いずれなる可能性ははらんでいる。人を雇ってやる(まさにここで指摘されていることは、その典型的な例だろう)というスタンスから、良い人材を招き入れるという姿勢に変える。その動きを戦略的な採用担当者はすでに行いつつある。

エンジニアは、働き方や仕事の進め方などは、時代の最先端を走っているといっても過言ではないでしょう。そしていま、採用の仕方、そして、キャリアの作り方も真っ先に変わろうとしています。そして、それらを担うのは、より幸せな働き方をしたいと強く願う、エンジニア自身に他なりません。Forkwell JobsCodeIQ は、そのお手伝いが少しでもできれば、と思っています。


(サカタカツミ - クリエイティブディレクター)

ライタープロフィール
おおかゆか(oukayuka)
Forkwell の発案者でプロダクトマネージャー。
エンジニアと企業が幸せな関係を結べるようなしくみ作りとそれを世の中に広めるのがお仕事。
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